中山 貴義 
1月16日から19日にかけ,東京の日本武道館で行われた第31回マーチングバンド・バトントワリング全国を鑑賞するために休みをもらって出かけていった。そこで体験したこと,感じたことを稚拙な文章であるが自分の記録のためにも書いてみた。
平成16年1月16日

 小雨の中,宮崎空港に送ってもらう。風も強く,飛行機は少し揺れるだろうなぁと多少心配があったが,マーチング全国大会に向ける期待のほうが大きかった。送ってもらった家内に「DVD買ってきてよ!」と念を押される。実は私たちの新婚旅行は第29回の武道館全国大会。それ以来,家内がマーチング鑑賞好きになったのは言うまでも無い。昨年は出産。今年は子守で留守番。歯がゆい思いをさせている。
 
16:45発のANA東京行き。期待とともに機体は空に飛ぶ。飛行機の中では2月号のバンドジャーナルを熟読していた。記事の内容は,吹奏楽連盟のマーチング全国大会。心の中は既にマーチング漬けである。写真にはたくさんの団体の,たくさんの笑顔があった。このステージに臨むまでには多くの苦悩や涙があったと想像できる。達成感からくる幸せの笑顔はとてもさわやかで,すがすがしささえ感じられる。同じ舞台に立ってみたい。そう感じると共に,同じように感じる全国の指導者も星の数ほどいることを改めて自覚させられた。
 マーチング全国大会に行くのは4年目となるが,東京への一人旅は今年で2年目である。一人での旅行は正直,気が楽である。着陸態勢。空から見る東京の明かりに胸が膨らむ。東京は以外と暖かく,都城の霧島颪の冷たさを再認識させられた。モノレールに乗り,山手線で渋谷から半蔵門線と乗り継ぎ九段下に。金曜日だけあって会社帰りの人が多い。東京の人は黒や灰色のコートを着る人が多い。今回のホテルは武道館から歩いて5分のグランドパレス。部屋は宿泊客が多く,ホテル側の都合で客室最上階の22階。後で聞いた話によると,このホテルは審査員や大会関係者の宿であるらしい。明日は雪の予報。寒くなる。

平成16年1月17日

 いよいよマーチングバンド・バトントワリング全国大会「小学生・一般・カラーガードの部」の初日である。雪のぱらつく中,歩いて日本武道館に向かう。金色のタマネギ。「あぁ〜今年もやってきた。」変な緊張感に襲われる。 今年は「中学校・高校の部」が11月に既に終わっており,分散したためか日程にゆとりを感じさせられる。初日の開演は10:50。綜合警備女子儀仗隊・ビバーチェの演奏で開会式が華やかに行なわれた。
 例年,中学校と小学校を比較すると,どちらかというと小学校の方が演奏・演技共に良いという印象を持っている。今年は中学生と比較はできないが,小学生らしい体全身を使った演奏・演技は,やはり見ていて楽しくさわやかだった。金管での構成が主であるが,高音域に対する鍵盤によるカバーや,低音とグロッケンなどの鍵盤とのコントラストなど,聞いていて参考になることが非常に多かった。高い評価を得たバンドに共通することは,まずサウンドがしっかりしていること。そして,演技がよく構成されていること。この2点だったように思われる。無理の無い音域で,しっかりと響き渡るサウンドは安心して聞ける。また,鍵盤をうまく活用することで,音色のコントラストや,音の輪郭をはっきりさせることができていた。屋内における鍵盤の有効性を知ることができた。また,「カラーガードの部」や「バトントワリングの部」からも言える事だが,演技を良く構成する事も大切だと感じた。スタートからエンドまで何か筋の通ったストーリー性や構成の連続性があると,分かりやすく,見ているほうも気持ちの高揚が容易であると感じさせられた。マーチングはショーであることの原点に立ち返った初日であった。
 さてこの日,小林ジュニアの今藤先生御一行と観覧席が近く,いろいろなお話をする機会ができた。人の縁とはすばらしいものである。この後,創価ルネサンスバンガードの前日公開練習を見に行くということ。是非に!連れて行っていただいた。ルネバンは南千住の地域の複合体育施設の体育館で前日練習を行っていた。響き渡るブラスの音!割れんばかりのパーカッションの音圧。はじめは圧倒させられるだけだった。盗まなきゃ!われに返って,まず始めに気づいたのは大音量のメトロノーム。ルネバンの音に負けないほどのメトロノームの音量。テンポ感は自然に叩き込まれる。そしてスタッフの多さ。実に20名以上いるのではないだろうか?とにかく多くの目でチェックされ指示が出されていた。また,その指示の的確さ。まずはそのパートの進歩した点を褒める。そして,具体的な改善点と激励の言葉。それに応えるメンバーの気迫の感じられる返事。
 
マーチングに限らず,音楽は人が演奏している。その人を動かすのは心。指導をする立場のものは,指導を受ける者の心やメンタル面をしっかりと考えなければならない。自分の気持ちを押し付けているだけでは,演奏者のやる気は沸いてこないことに気づかされた。楽しくマーチングをさせる。そのためにはまず,「頑張っている自分を認めてもらっている。」ことのプレーヤー側の認識からかもしれない。そして,自分たちはすばらしい演奏・演技を作り上げているという自信と信念。それを演奏者の気持ちの中に植えつけて育むこと,それこそ指導者に大切なのだと感じた。電気が走るような体験だった。
  練習だったが,中間部のバラードではメンバー全体からあふれてくる心のこもった演奏に目が潤んでしまい,音楽のすばらしさを再認識させられた。明日の一般のマーチングを思うとなかなか眠れない。

平成16年1月18日

 気温は低いが,全く苦にならない。いよいよ1年ぶりの一般のマーチングショーである。10:20開会のため,近くの楽譜専門の古本屋で時間をつぶす。情報や物の豊富さ,演奏会の機会など都会はやはり羨ましい。
  一般バンドのマーチングは,パワーとパフォーマンス,動きのスピードと完成度の高さである。100名以上の団体もあれば15人ほどの団体もある。どちらも引けをとらない演奏・演技であり,それぞれに自分の団体のカラーを見せつける。武道館のお客さんもその精一杯の演奏・演技に惜しみない拍手を送る。毎年思うが,このときの武道館は東京にいながら,全く別の世界にいるような気にさせられる。
 さて,毎年楽しみにしている関西地区代表の1989 JOKERSの演奏・演技は今年もよく構成されたコミカルなマーチングだった。笑わせていただきました。この団体は,とにかく観客をいかに楽しませるかに命をかけている。大変さわやかで気持ちが良い。来年も期待したい。
 ついに前日練習を見学したルネバンである。船乗りと,それにあこがれる少年を題材に構成されていると私には受け取られた。まずそのストーリー性と,それにあった曲想の構成は大変分かりやすいものだった。オープニングの華やかさ,唄うバラード。そしてエンディングに向かっての盛り上がり。どこをとってもショーに停滞感が無かった。息つく暇も無い,いやその世界にどっぷりと引き込まれる。サウンドも高音から低音までバランスの良い響きが武道館中に響き渡った。決してうるさくなく,それでいて目の前まで来るサウンドだった。武道館が沸いた。結果は「グランプリ」「内閣総理大臣賞」。そこには確かに感動があった。おめでとうルネバン。そしてありがとう。

平成16年1月19日

 午前中は銀座のYAMAHAに行き,楽譜やCDを見て回る。来年の自由曲の候補になりそうな曲。今後の演奏の参考録音になりそうなCD。直ぐに2時間経過。いいなぁ〜都会は。東京モノレールに乗り,羽田へ。モノレールで品川の街が後ろに遠ざかるのを見ると,いつも物悲しさが胸に沸いてくる。数日間の非日常の経験と,明日から日常に戻ることの寂しさからだろうか。今年もきてよかったなぁ〜。昼過ぎ羽田に着き,夕方の便で東京を後にする。いつもより宮崎の風は冷たく感じた。
 今年もすばらしいショーをたくさん見ることができた。感動もたくさん味わった。そして,全国大会というマーチングの頂点を見ることで,自分のバンドの明日からの目標や,目指すべき方向を再認識することができた。というか,毎年武道館で一年間の部活動の活力を得ているのかもしれない。来年の全国大会を期待しつつ,少しでも三股中のマーチングが,サウンドが全国大会の感動を感じさせられるようなバンドに成長するよう,演奏・演技,どちらも育てて行きたいと感じた。そのためには,まずは自分の鍛錬も必要不可欠と肝に銘じながら・・・

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